「文体診断ロゴーン」を御存知でしょうか。文章を入力すると、名文の中から似た文体を探し出して、どの作家や著名人の文章と似ているかを教えてくれるツールです。文章の読みやすさなども診断してくれます。最近知ったのですが、面白そうですよね。
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子規本人の文章でテスト
文章診断。本人の文章だったらどうなるのか。試しに正岡子規の文章を入力してみました。まずは「墨汁一滴」から好きな文章をピックアップ。
ガラス玉に金魚を十ばかり入れて机の上に置いてある。余は痛みをこらへながら病床からつくづくと見て居る。痛い事も痛いが綺麗な事も綺麗ぢや。
結果は…
井上靖?福沢諭吉?年代もバラバラだ。あれ、おかしいな。一致指数も低い。今度は少し長めの文章にしてみました。
或る絵具と或る絵具とを合せて草花を画く、それでもまだ思ふやうな色が出ないとまた他の絵具をなすつてみる。同じ赤い色でも少しづつの色の違ひで趣が違つて来る。いろいろに工夫して少しくすんだ赤とか、少し黄色味を帯びた赤とかいふものを出すのが写生の一つの楽しみである。神様が草花を染める時もやはりこんなに工夫して楽しんで居るのであらうか。
寺田寅彦!子規周辺の人が出てきました。岩波茂雄は岩波書店の創業者です。文章を読んだことがないので何とも言えませんが、和辻哲郎も明治だし、年代的にも近づいてきた気がします。
「病牀六尺」なら?
よし有名な文章にしてみよう。「病牀六尺」の初回、「病牀六尺、これが我が世界である。しかも此六尺の病牀が余には広過ぎるのである」で始まるあの文章の全文を入力してみます。どうでしょう?また諭吉!でも幸田露伴が出てきました!御存知のように子規と同い年です。子規が小説「月の都」を見せに行って小説家を諦めるきっかけになったエピソードは有名ですね。あの前後の子規のテンションの落差。元が無邪気で自信家なだけに挫折感の大きさを想像すると悲しくなるのですが…話が逸れました。困った。子規が出ない。
「坊っちやん」ではどうかな?
漱石ならどうなるでしょう。「坊っちやん」の冒頭の一段落でチャレンジしてみます。鴎外、露伴、芥川。うーん。錚々たるたる顔ぶれですね。文章評価が高いのはさすがです。映画が公開されたばかりの司馬遼太郎「関ヶ原」でも試しましたが、北原白秋、島崎藤村、三島由紀夫という結果でした。
本人が出ないのは、カラオケの歌手本人が歌って高得点が出ないのと同じような感じでしょうか。上限が5000字なので、もっと長い文章を入力すれば結果も違ってくるのでしょうか?でも、さすがにそこまでやる気力がありません。
自分の文章は?
試しに自分もブログの文章を使って診断してみます。素材はこちらの記事「子規の短歌③のぼさんが立った!寝たきり歌人正岡子規のチャレンジ」にしてみました。結果は坂口安吾、井上ひさし、海野十三。無頼派に、劇作家、SF作家。共通点は何か、どこが似ているのか、などという疑問はともかく、何か嬉しい。しかし、一文が長いとの指摘を受けました。簡潔な文章は読みやすさの基本。意識しているつもりだったのですが、身についていなかったようです。文豪の本人一致診断を引き出すことはできませんでしたが、もっと分かりやすさを心掛けて書こう、と決意を新たにすることができましたので、よしとしておきます。最初は張り切っていたのに面倒くさくて、すぐに後悔したのは内緒です。
参考文献 講談社「子規全集」11巻、夏目漱石「坊っちやん」(岩波文庫)
文体診断ロゴーンはこちら。
http://logoon.org/
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